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カスタマーハラスメントが社会問題化

執筆者の写真: YACHIYO ISHIDAYACHIYO ISHIDA

カスタマーハラスメント(カスハラ)が毎日のようにニュースに取り上げられています。一昨年、厚労省の事業委託によりカスタマーハラスメント対策企業マニュアルが策定され、昨年9月には厚労省が心理的ストレスによる精神障害の労災認定基準にカスタマーハラスメントを加える改正を行いました。医療の領域においては、ペイシェントハラスメント(ペイハラ)がカスハラの一つに該当するため、組織をあげての対策に取り組んでおられるご施設が多いのではないでしょうか。


ペイシェントハラスメント!?

先日、家族の付き添いで病院に行き、目にしたことを例にあげたいと思います。外来で採血の順番を待っていると、処置室の奥の受付者に高齢の男性が大声で怒鳴っています。「どれだけ待たせるんだ!たかが採血でもう1時間以上も待っているんだぞ。なんでこんなに時間がかかるのか理由を説明しろよ!」かなり興奮しているように見えます。次に看護師さんが対応にあたりました。「お待たせしてすみません。お気持ちはわかりますが、今日は混んでいて皆さんお待ちです。もうちょっとお待ちください」すると、患者さんはますます語気を強めます。「混んでいるのは見ればわかるんだよ!なんでこんなに待たせるのか理由をちゃんと説明しろとさっきから何度も言っているんだよ!」と訴えます。すると、3人目に上司と思われる師長さん(?)が対応にあたります。「見てください!ほら!皆さんきちんと順番を待っているでしょ?あなたを優先するわけにはいかないんです!そもそも何時からこここで待っているの?」と言い方、振る舞いから威圧的にも見えます。患者さんの怒りはさらにヒートアップしその場で収まるようには見えませんでした。待合では約20分程でしょうか、患者さんと職員との押し問答が続きました。

さて、この患者さんの行為はペイシェントハラスメントにあたるでしょうか。


クレームとハラスメントは別もの

病院を利用する際には概ね待ち時間があります。混んでいるなと認識すると多少は待つ覚悟ができるものですが、待てる時間の感覚は本当に人それぞれです。この場面では、大声をあげて怒っているようには見えましたが、暴言、暴力、悪意のある嫌がらせとまではいかない、いわゆるグレーゾーンの「クレーム」のように見えました。確かに1時間以上の待ち時間は私も採血を待つ時間としては長く感じますし、待ち時間の問題は病院側が業務改善につなげるべき患者さんからの意見だからです。また、この患者さんはなぜ時間がかかっているのか理由を説明してほしいと訴えていますが、第1対応者→第2対応者→第3対応者すべての人がその答えを投げ返すことをしていません。


グレーゾーンのクレームに応じるとき、例えば・・・

①場所を移す

大勢の患者さんがいる待合でのやりとりが長く続くと、患者さんたちが不快な思いをされたり、病院のマイナスイメージにつながる場合があります。タイミングを見て、別の場所にスマートに誘導します。

②丁寧に傾聴する

患者さんの声を聴くことができていないと対応者が代わっても同じやりとりを繰り返すだけです。患者さんが何を求めているのかを丁寧に聴きます。

③お待たせしたことへのお詫びと状況説明

落ち着いてもらい、お待たせしたことへのお詫びと状況説明を丁寧に行い、納得してもらいます。人は誰でも、丁寧に接してもらえていると思えると、相手にも共感的に理解を示そうとします。あなたたちも忙しいのはわかる等のフレーズを聞くことができたら、例えば、「できる限り待ち時間がないように対応にあたっているので、もし待ち時間が不安なときはその都度看護師に声をかけてほしい」のように病院側の思いを丁寧に伝えます。

④スマートに短くやりとりを終える

30分以上のやりとりは続けていても非効果的です。待ち時間をさらに待ってもらうようなことはせず、素早く対応を終わらせることもポイントです。


まとめ

カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)対策で、もっとも大切なことは組織をあげて従業員を守る体制をつくることです。次に現場で対応にあたる方々がクレームやカスハラの知識、対応、対抗する方法を身に付け、自分の身を守る行動をとれることだと思っています。医療におけるこの問題は想像以上に複雑で奥深く、私が触れられることは僅かかもしれませんが、今後も一緒に考えていきたいテーマです。

10月には、「クレーム・カスハラ対応法」として公開セミナーを準備中です。改めてご案内いたしますので、もう少々お待ちください。







 
 
 

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